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「それで、話とは何ぞ?」 俺が聞くと、ボティスは 軽く眉間にシワなどを寄せたが 「話という話ではないが」と 一気に話し始めた。 「まず言っておくが、俺は お前達の言う “魔の者” だ。蛇の悪魔。 この国では何でも神だが、俺は悪魔だ。 元は天にあった。だが堕天した。 罪を犯したからな。 それで悪魔となり、普段は地界に棲んでいる。 軍を持つ者は、皆それぞれに自分の城を持つが 地界には俺の城もあり、俺は 60程の軍を持つ。 だが最近は、こうして地上にいることが多い。 ハーゲンティと人間の魂を契約した。 期限は 50年後。つまり、アリエルの件だけでなく 50年程 協力しろ ということだ。 ハーゲンティは、いつも この誘い方だ。 普通に誘うと、俺がなかなか頷かんからな。 普通だと面白くないだろ? ここまではいいか?」 実は、半分程しか わからぬであったが 「うむ」と頷き、葡萄酒を飲んで誤魔化す。 長くなりそうな気がした故。 「悪魔は、いや天使であっても上級の者は それぞれ個々の能力を持つ。 俺は、相手の思考を読むことが出来 過去、現在、未来の 三世を見通す。 だが、お前たちは読まん。 何故なら話がしたいからだ。 読んでは話が出来んだろう? それでもだ、最初に そいつの本質は見える。 それで、お前と話がしたい と思った」 「うむ。して何を?」 ボティスは “お前と話を” と言うた時に、俺に差した人指し指を固定したまま、長い牙の口も止め 急に笑うた。 「わかりやすく言えば 俺は お前を、ナンパした訳だ」 ナンパというのは、好む者に声を掛け誘うものと 思うたが... 「俺は男色ではない故」 「俺もだ」 からかわれておろうか? と考えたが ボティスは真面目な顔をしておる。 そして、ため息などをついた。
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