5/10
前へ
/345ページ
次へ
「すまぬ。飲み込みが悪い故」 「謝るな。俺が 最初から “友になりたいから” と 説明すれば良かった。 お前の飲み込みが悪い訳じゃない。 俺が照れて言えんかったのだ。 こういうことをマトモに口に出して話したことがないからな。 だが、急に俺のような者が声を掛けたら 怪しむだろうと思った。異国の悪魔だ。 それで、俺の概要と目的を話した訳だ。 では、話からしたい と思うが、いいか?」 「うむ」 「次は、お前が話せ」 「何?」 「この山で生まれたのか?」 「いや、別の山だ」 「何故 ここに来た? 皆 自然と集まったのか?」 「里は、仲間を集めたのだ。俺は銀狐である故 元より 厄獣 魔縁と、疎まれておった故... 」 「魔縁? 黒毛ってだけだろ? 俺は どうなる? アダムとエバを誘惑した蛇かと疑われたこともある。その時は まだ天使だったのにも関わらずだ」 ボティスは、話も上手いが 聞き上手でもあり こういった調子で、葡萄酒を空ける頃には 辺りは すっかりと夜になり 俺は 初対面であるのに、菊の話などもしていた。 ボティスは黙って聞いていたが 「二度目は、何故 許した?」と聞いた。 「そんなクソ共、俺なら細切れにする」 「俺が裁いてはならぬ と思うた。神でない故。 もう その時は、菊を助けるためでもなく 相手は向かって来てもおらぬであった。 俺がしておったことは、復讐であったからのう。 耐えねば、連鎖する。必要なきこと。 だが 今であるから、言うは易し じゃ。 あれほど自制したことはない。 血という血が、皆 頭に昇った。 また同じようなことなどがあれば、次は自制出来るかは わからぬ。修行が成っておらぬ故」 「充分 成っているだろ」と、ボティスは 立ち上がり「それに乗る」と、自転車を指差す。 「お前と。空き瓶も捨てに行く」 自転車は「貸せ」と 道路まで ボティスが運んだ。
/345ページ

最初のコメントを投稿しよう!

764人が本棚に入れています
本棚に追加