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「玄翁に 里に立ち入る許可を得に行く」と 言うので、また自転車に乗る。登り坂は俺じゃ。 「透明さが目立つからな。 お前の脚力も鍛えられる」 下りの時の方が車は多かったではないか。 「やはり 榊はやらぬ」 「そうか。なら口説くとするか」 「本当か?!」 「そのうち」 なんであろうか? この やる気のなさは。 好ましく想う心を 楽しんでいようか? 久しく恋などしたものであれば わからぬでもないが。 里の屋敷で 玄翁に許可を取ると 「共に飲まぬか?」と、誘われておるが 「後で来る。飯を済ませておいてくれ。 俺と浅黄は食った」と 言うて 俺を手招きして、また楠の広場へ連れて行く。 里は夕であったが、人里は明るくなってきた。 あっという間じゃ。 「お前は、あのような者だ」と 空を指差す。 「俺がみた お前の本質だ。朝黄色」 それは、空が白み 青を増す前の 水に黄の溶ける 朝焼けの色であり 大変に清きものであった。 月や星すら、眩しく思うていたものを。 俺が このような 何も答えられぬだったが 胸が熱く、嬉しくあった。 生きるものだ と、泣ける程。
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