0 Grayish

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 鍛錬された彼らの嗅覚は非常に優れている。素人ならばいざ知らず、少しでも異臭をさせたら、容易くかぎ取られてしまうだろう。――  この場合の異臭とは、生体反応のことである。  だから、初動で人間のそれを十分に観察し、奪うのは重要だったのだ。  単純な戦闘力では上回る個体は確かに存在するが、自分程氣を複雑怪奇に操ることに長けた者はいない、彼はそう自負してやまない。  それこそ、自らの氣を誤魔化し、他の生物を装ってみせる者の存在など、都市が想定していないように。  彼は白んだ街並みを通り抜ける。全身を巡る気を整形し、文字通り眼の色も変え、馴染ませ――先程の小娘から得た情報の通りに、自分を偽りながら。  あとは、さる者の手を借りて完璧に偽造した書類を見せるだけだ。  いつの間にか、彼の眼前には灰白色の門が構えられていた。  そう大きくもないが、彼よりもやや高く、厳重に閉じられてため、向こう側は全く伺い知れない。  彼は押し留められるように立ち止まり、深い呼吸をした。  此処が無彩色の街の終わりだ。  その先には極彩色の全てがある。  “多軸回廊都市(アクシズ)”――時の白砂に埋もれた過去、変容し続ける現在、空想と可能性のみで推し量る未来。    脳裏を一瞬、今までの長い道程がよぎった。  だが、都市で望むものを手に入れたならば、苦労などなかったに等しいと思うだろう。彼はそう確信している。  ローブの袖に入れたものをつと意識し、息を長く吐き出すと、彼は門に向けて歩みだした。    
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