プロローグ

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 塔が燃える音がしていた。建物全体を覆う炎はすでに内部まで侵食し、地下にある僕らの生活スペースをも焼き尽くした。そして間も無く、さらに地下深くにあるこの書庫へと到達しようとしている。  防御の魔法を施していても、建物を蝕み食い荒らす炎の熱と蔓延する煙に圧倒されそうになる。それでも、僕はひたすらに目の前の書物のページをめくることに集中した。  右手に握る短剣は青白く光り目に留まらないほどの速さで書物の情報を吸収する。僕の魔力を表出させる媒体となる剣。文字列を追っている暇はない。この書庫に残された蔵書も、火が到達すれば一瞬にして灰と化すだろう。それまでに少しでも早く、少しでも多く、書物から得られる知と力を短剣へと読み込ませようとしていたーー
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