第二章 指名手配犯の騎士

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「ごめん、気に障ることをしたのなら謝るよ。僕、物心ついた頃から北の塔の中から出たことがないんだ。母さんと妹以外の人と話したこともない。だから世間知らずで……君がどうして怒ってるのかも正直わからない。でも、ごめん、ゴメンナサイ……」 「北の塔?」  ティファニーが歩みを止め、振り返る。どうやら興味を持ってくれたようだ。 「うん。北の塔に住んでたんだ。一昨日襲撃を受けて全焼した……知らない?」 「初耳だな……。一昨日の何時頃だ?」 「多分夕方頃からかな。僕も地下深くにいたから詳しくはわからないんだけど、夕方頃から上が騒がしくなってきて、塔が燃えてるってわかったんだ」 「夕方か……こちらの塔が騒がしくなってきたのもちょうどその頃だったな」 「そうなのか!?」  ほぼ同時刻に北の塔と北東の塔が襲撃されたとは。二人で情報をすり合わせた結果、①夕方頃の襲撃、②炎による塔への攻撃、③帝国軍(赤軍)が介入という点が一致していた。  ティファニーが言うには、北東の塔が燃え始めたのは日がほぼ落ちた頃で、被害も北の塔ほど激しくはなく塔の一部の損傷のみにとどまったという。  奇妙なのは帝国軍が関与してきたという点だ。場を収束するために集まったというのならわかるが、北の塔では母さんを、北東の塔では結界師を兵士が殺害している。北の塔の結界師の安否は定かではないが、同じように殺害されているかもしれない。     
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