第二章 指名手配犯の騎士

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 つまりこういうことらしい。塔全体が住宅になっており学校まで包括しているのは北の塔だけで、他の塔は結界師と塔周辺の安全管理に従事する労働者が働く場であるということだ。ティファニーも詳しくは知らないそうだが、他の塔もこのような体制だろうとのことである。北の塔だけがなぜそんな体制をとっているのか。僕にとっては新たな謎が生まれてしまった。 「要するに、北の塔には何世帯もの住民がいて、塔から出ることなく暮らしていた、と」 「そうだね。そしてそんな体制をとっていたのは北の塔だけで、他の塔は結界を維持するために人々が働く場所だってことだよね」 「私が知る限りではそうだ。しかし北の塔の内情も私は知らなかった。他の塔も実態は定かではないな」  そうか、と僕は相槌を打つ。わかりきったことだったけれど、僕はあまりにも外の世界の事情を知らなすぎる。塔の外のことももちろん、北の塔の結界師が誰だったのか、学校とはどんなものなのか、などといった塔内部のことすらも知らないのだ。結界師のことであれば、ティファニーは知っているだろうか? 「僕は北の塔の結界師がどんな人物かも知らないんだけど、君は知ってるかな?」 「私も北の塔の結界師は一度しか見たことがない。それも姫様が交信していたのを遠目で見ていただけだ。黒髪で若くもなければ老けすぎてもいない。中肉中背、顔は驚くほど印象に残らない男だった」     
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