第二章 指名手配犯の騎士

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 ティファニーは自身の口角が上がっていることに気づき、照れ隠しのためか僕の言葉によくわからない反論をした。すぐに元の険しい表情に戻ってしまったが、心なしか頬を赤らめている。 「お前は、私を信用できるのか……?」真剣な目つきでティファニーが問う。「私は指名手配犯だ。それも、姫様を……塔の結界師を殺した重罪。そんな相手を、簡単に信用していいのか?」  彼女の言うことはもっともである。仮にも指名手配犯として街中に、下手をしたら全国にその名を轟かせている人間相手に、ここまで接触してしまっていいのか。塔が襲撃された日、彼女は非番だったという。彼女が北の塔を壊滅させたのち北東の塔をも襲撃した可能性は否定できないのだ。それでも。 「僕は今目の前にいる君を信じるよ。君が嘘を吐けるタイプには見えないし、十六夜姫に対する忠誠は本物だ」 「……!」  根拠は何もないが、十六夜姫への敬慕の意を語る彼女の瞳には一抹の嘘も感じられなかった。それに彼女は、十六夜姫は帝国軍に殺されたと言っていた。帝国軍は母さんを殺した奴らだ。その帝国軍が十六夜姫を殺したという話の方が、僕にとっては筋の通った話だった。彼女がもし本当に指名手配犯に仕立て上げられたのだとしたら、北の塔を襲った犯人として僕の名前が上がったとしても不思議はない。彼女の身に降りかかったことは、僕にとっても他人事ではないのだ。     
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