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「君の方こそ、僕を信用できるのか? 北の塔に住んでいたなんて真っ赤な嘘かもしれないよ?」
今度は僕が問いかける。ティファニーは束の間手を顎に当て思案してから答えた。
「私もお前と同じだな。お前が嘘を吐けるようには見えない。それに、その魔剣」
「魔剣? これのことか」
ティファニーは僕の魔力表出媒体である短剣を指差した。どうやら剣の形をした魔力表出媒体を魔剣と称するらしい。
「仕事柄、数々の魔剣と手合わせしてきた。中には血に濡れた邪悪な心を映したような剣を使う者もいた。剣は持ち主の心を映す。お前のそれは人を傷つける類のものではない。人を癒し、人を守る剣だ」
姫様と同じーー消え入るような小さな声で、彼女がそう呟いたような気がした。
気付けば時刻は昼時に近づいていた。ひとまず空腹を訴える腹の虫を抑えるためにも、食事を摂ることにした。食料の調達はティファニーに任せ、僕は彼女が獲ってきたなんの動物かわからない肉やら山菜やらを魔法で調理する。料理は全て母さんがやってくれていたため自分では初めてだったが、ティファニーが焼けばとりあえず食べられると言うので、彼女の言う通りに肉と野菜を焼いた。焼いただけの肉と山菜は、確かに食べられるが素材そのものの味しかしなかった。
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