第一章 桎梏《しっこく》の塔の強襲

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第一章 桎梏《しっこく》の塔の強襲

 その日はいつもと変わらない1日として始まった。天窓から差し込む陽の光の眩さに目を覚ますと、僕は地下書庫の片隅のベッドから起き上がり天窓の近くまで飛んで行く。外の景色はぼんやりとしか見えないけれど、目がくらむほどの強い光が今日は晴天だと教えてくれた。朝日を堪能したところで、次なる目的地は地下1階の生活スペースだ。生活スペースと直結する螺旋(らせん)階段が部屋の中心に設けられているが、せっかく天窓の近くまで飛んできたのに降下して階段を上るなど二度手間以外の何物でもないため、そのまま空中を移動するのが常である。 「おはよう。シャルル」  生活スペースへ入るとキッチンで朝食を作る母さんがこちらを振り返る。ふわりと揺れる白銀のウェーブヘアは僕がそのまま受け継いだ。「おはよう」と母さんに返すと、今度はリビングで先に朝食を食べていた双子の妹・ミシェルが声をかけてきた。 「兄さん、今日も優雅なお目覚めね」
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