第二章 指名手配犯の騎士

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 ティファニーは朝食の蒸し芋を咀嚼しながら首肯した。北東の塔は十六夜姫を塔の頂点とし、その下に三賢人と呼ばれる重役が置かれている。彼らはそれぞれ塔を覆う結界の管理、塔の内部及び周辺地域の監視・記録、塔周辺の住民情報の管理を担っている。そして塔の内部はもちろん周辺地域で犯罪を犯した者がいれば、登録されている住民情報によって居場所を特定されるのだ。 「じゃあ、ここはとっくにバレていてもおかしくなかったのか!」 「そういうことだ。だからここまで対応が遅いとなると、塔内部は極めて混乱しているに違いない。姫を殺したとされる私の捜索よりも優先すべき事項の対処にあたっているのだろう」 「内部に誰か君の無実を訴えてくれている人がいる可能性は? それで捜索は滞っている……とか」「あの映像を公にしている時点でその可能性は薄いな。少なくとも通常通りならば、映像を流すまでに慎重な議論を経て決定する」  それもそうか、と僕は納得する。塔からの発表として公開する情報が、十分に議論されていないはずがない。 「でも冤罪が発生している以上、今回の件では十分な検証はされていないんじゃないか? 本来どういう風に検証しているんだ?」 「監視・記録の三賢人、如月氏が映像を映し、それを複数の専門家たちが見て検証する」 「それならやっぱり、今回はちゃんと検証されていないんじゃないかな? あの映像だけでは君を犯人と断定する材料として少なすぎるよ」  ティファニーは口ごもり、言いづらそうに口を開いた。「塔側が、私を犯人にしたいという可能性はある」
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