第二章 指名手配犯の騎士

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「どういうこと?」 「私が犯人になることで全てが丸く収まるのなら、彼らは喜んで私を犯人にするだろう」 「そんなものなのか? 塔の組織というのは」 「複雑な組織だ。誰か一人を悪とすることで、返って収拾がつく場合もある」  一つの悪を打倒するために生まれる結束力。そんなもののために、彼女はこの世で一番慕っていた人を殺害した罪を着せられるのか。 「だとしたら、なおさら君の無実を証明しないと、だね」  そんなことがあっていいはずがない。僕は許したくない。目の前の少女一人が犠牲になることによって生まれる平和など、僕だったら享受したくない。 「その賢人の、如月氏に会いに行こう」 「簡単に言うが、塔には部外者は入れないぞ。塔の労働者として住民情報が登録されている者や、事前にもしくはその場で立ち入りを許可された者以外は侵入できないよう、結界が張り巡らされている」 「そんなに厳重な結界なのに、敵の侵入を許したのか……」 「姫様を殺したのは帝国軍だったからな。塔への立ち入りは当然容易だった。騒ぎの発端は謎だが、そう考えると内部犯の可能性もあるな」     
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