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初めて目にする光景に高揚する一方、母さんやミシェルと一緒にこの街を歩けたら、という思いも押し寄せてくる。ミシェルとは再会できたら可能かもしれないが、母さんとはもう二度と実現できない。一度そう考えてしまうと悲しみに膝からうち崩れて立ち上がれなくなりそうだから、ミシェルと再会し母さんの死を確認するまでは、この心の痛みには気付かないことにしよう。
(すごいな。この辺り一帯が全部揃いの建物なんだな)
僕は気分が高まるあまり、ティファニーにしきりに話しかけた。話しかけたといっても、姿を消したティファニーとの意思疎通はテレパシーで行ったため、実際には言葉は発していない。迷彩魔法をかけた状態でも会話することはできるが、それではすぐに違和感から通行人に気づかれてしまうだろう。ティファニーはテレパシーの会話に慣れている様子で、僕の提案を受け入れてくれた。なんでも姫様とテレパシーを交わしたことが度々あったという。
(だが似たように見えても、細かい形の違いで何種類にも類別されている。塔より北方には藁でできた屋根の家もある)
(藁で!)
ティファニーによれば、北東の塔の周辺区域は古くからの伝統が保護されているらしい。塔に近い場所ほど背の低い建物で統一され、離れた場所にはかなり背の高い建物郡が目視できる。藁の屋根の建物はちょうど塔の反対側にあたるため、その場では見えなかったが。
(お店もたくさんあるんだね。無事君が無罪放免になったら、街を歩いて買い物でもしようよ!)
(別に構わないが、金は持っているのか?)
(あ……)
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