第二章 指名手配犯の騎士

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 元の住まいであった北の塔を後にしてからずっと山の中でサバイバルのような生活を送っていたが、そういえば僕はお金を持っていなかった。しかもそのサバイバル生活でさえ、ティファニーがいなかったら成立しなかったものだ。というのも、僕が食料の調達をしようにも、獲物にはすぐに逃げられ山菜はどれが食べられるのかわからずといった調子だったため、彼女に任せきりだったのだ。  しかし今後もそうはいかないだろう。街の中に野生動物はいない。お金がなければ街中では食べ物にありつけない。そうなると、ティファニーを無罪にした次はどうやってお金を手に入れていくかを考えなければならない。 (無実の罪を着せた賠償として、金品を要求するのはどうだろう?) (うまくいけばできるだろうが、そもそも私の無実を実証する手立ては思いついたのか?) (うっ……)  街の風景にすっかり興奮して忘れかけていたが、今は塔の様子を視察に来ただけであって、無実を証明する作戦はまだ思いついていないのだった。 (とりあえず塔の様子を見てみて、可能そうだったら僕が魔法を使って侵入してみるよ!) (まったく。大丈夫か……?)  不安を隠せないティファニーは独り言のように言った。そんなやりとりをしているうちに塔の敷地と街を隔てる外壁までたどり着いた。しかし外壁から塔までは、まだかなりの距離があった。内部の様子は高い壁に阻まれ肉眼では見えなかったが、塔の敷地内にもさらに塔周りを守る堀があるという。     
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