第二章 指名手配犯の騎士

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 外壁には外と敷地を結ぶ門があったが、多数の市民が押し寄せ、門の両端に立つ二人の門番に詰め寄っている。十六夜姫殺害についての抗議だろう。 「指名手配犯はまだ見つからないのか!?」 「姫の直属の護衛が犯人とはどういうことだ!」 「塔の人事はどうなっている!」 「早く犯人を見つけて死刑にしてちょうだい!」  叫び声に近い抗議が遠巻きに聞こえてくる。ティファニーにはあまり聞かせたくない内容だった。裏通りに戻ろう、とティファニーに告げ、僕らは再び人気のない道へ入った。 (門番は市民の対応に追われているみたいだ。あの混乱に乗じて、ちょっと侵入してみようと思う) (ちょっと、などと軽い気持ちで侵入できると思っているのか?) (ちょっと試すだけという意味さ。三賢人に会うにしても、塔に入れないと始まらない。僕の魔法でそれができるのかひとまず確認するだけだよ) (しかし迷彩魔法では姿は隠せても実体は隠せない。異分子として結界に感知され、たちまち排除されるだろう。そして最悪捕まるか、逃げ切れてもお前の情報が塔側に侵入者として登録される) (それは怖いなぁ。じゃぁ、透過魔法ではどうだろう?) (透過魔法? 実体すらも消してしまうという迷彩魔法の上位互換か。だがそれもすぐに結界に感知され……)     
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