第二章 指名手配犯の騎士

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 ティファニーが言葉を言い終えないうちに、僕は透過魔法を自身に施した。短剣を自らの心臓にゆっくりと刺していく。刃の半分まで刺し込んだところで、僕の実体は一瞬にして消えた。ティファニーはしばらく僕の姿を探すように無言で周囲を見回した。僕はその間に少しティファニーから離れる。次にティファニーは精神を研ぎ澄ませるかのように目を閉じた。視覚以外の感覚に集中し僕の気配を感知しようとしているのだろう。その隙に僕はどんどん距離を離していく。 (そこだ)  路地を吹き抜ける風がティファニーの髪とマントを揺らした。その直後、彼女が僕を指差した。なんだ、見つかっちゃったか。そう伝えて僕は胸に刺さった抜く。抜いた部分から、たちまち僕の実体が戻る。ティファニーはそれを見て、ハッとしたように目を見開いた。 (やっぱり見つかっちゃうかな……?) (いや……)  彼女は信じられないというような表情をしていた。そして続ける。 (そこまで遠くに行っていたとは)  彼女の目を欺けたことで、彼女の中で僕の魔法技術は信頼度を増したようだった。
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