第二章 指名手配犯の騎士

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 ティファニーの言った通り、塔の周りは水堀で囲われていた。堀には東西南北にそれぞれ橋が架けられており、人々はそのいずれかから出入りしているようだ。僕は空中を移動し、先ほど同様橋からは少し距離を置いた壁から根元の建物へと侵入した。  塔も街と同じく木造建築らしく、木の柱や壁で覆われていた。侵入した場所は食料の備蓄庫のようで、人は見当たらなかった。壁をすり抜け、隣の部屋を覗く。こちらは家畜小屋のようになっており、馬が何頭か繋がれている。が、やはり人気がない。1階はこのようなものなのだろうか。他に厨房・食堂も探索してみたが、人一人見かけなかった。  えも言えない異様な空気に包まれていた。2階に上がる。2階には武器庫や事務所のような場所があった。先の襲撃の際に荒れたのだろう、破れた書類や武器で部屋中散乱していた。しかし、やはりここにも誰もいない。  続いて3階。2階よりもさらに荒れている。柱や壁には焦げたような跡。ここでようやく人を見かけた。数人は帝国軍の兵士だ。見回りをするように歩き回っている。そして、数人は塔の労働者だろうか、傷だらけになって倒れている。兵士はそれを確認して回るように警備している。  異常だ。  なぜ兵士は倒れている人間を助けずただ放っておく? 彼らが犯罪者という可能性もあるが、それならば拘束なり投獄なりするものじゃないのか?     
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