第二章 指名手配犯の騎士

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 倒れている人々はみな動かない。目は閉じているか、虚ろに宙を見つめている。怪我は見たところ命に別状はなさそうだが、放っておいていいものでもなさそうだ。治癒してあげたいが、今剣を心臓から引き抜けば、透過魔法は解けてしまう。ひとまず剣を使わずに済むような応急処置だけ施し、僕は4階へと向かった。  4階は一つの大広間になっており、そこにはかなりの人数の人が倒れていた。床が人で埋め尽くされるほどの人数。100人はいるだろうか。それに対し帝国軍の兵士は6人。やはり倒れている人々を監視するように立っている。  見ると広間の東側と西側に、大きな祠のようなものがあった。3段の段差になっており、手前の2段には食べ物や酒と思しき液体が供えられている。そしてその奥には小屋のような祠。中には何が入っているのだろうか。  ふと、ピリリとした視線を感じた。振り返ると、倒れている何人かが虚ろな目で僕の方を見つめているのだ。  もしかして、気付かれている……?  僕は怖くなり、その場を後にする。5階へと続く階段フロアに逃げ込むと、その視線からは逃れられた。そして塔の外壁付近で待機しているティファニーに呼びかける。 (ティファニー! 聞こえたら返事をしてくれ!) (なんだ?)  間髪入れずに返事が聞こえ、僕は少し安堵する。そして今見た内部の状況を伝える。 (話だけ聞けば、帝国軍が塔の関係者たちを監禁しているようだな)  監禁、か。そうだよな。怪我も治療せず床に転がしたまま放置なんて異常だ。どうしよう。 (私も塔へ行く)     
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