第一章 桎梏《しっこく》の塔の強襲

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 抽斗の中身を全て取り出すと、確かに奥には不自然な空間があった。どうして今まで気付かなかったのか、気付かないような魔法でも施されていたのか……。とにかく僕は抽斗の最奥と思っていた部分を調べてみる。どうやらちょうど抽斗に収まる大きさの木箱が嵌っているようだった。  抽斗にぴったりと収納してあったはずの木箱に触れた途端、木箱はまるで自身が意思を持ち自ら這い出てくるかのように動き始めた。それを取り出し蓋を開けると、中には長さ30cm程度の短剣が鎮座していた。短剣は透き通るように白く、かすかに青みがかっている。ミシェルの剣と対になるような片翼を模した鍔には鮮やかな青色の宝石が嵌め込まれていた。  薄暗い書庫の中、その剣だけが青白く発光していた。僕はその光に魅了され硬直しそうになったが、すぐに母さんの言葉を思い出す。 「そうだ、本を読まないと……。この短剣を使って……」  僕は手当たり次第に付近の本棚を漁った。幸いその周辺の棚は僕が学習を始めた棚のちょうど反対側にあたり、未だ手をつけていない箇所だった。震える手で取り出し開いた本に短剣をかざすと、剣を通して本の内容が瞬時に頭に流れ込んでくる。その速度に合わせてページをめくれば、瞬く間に1冊の本を読み終えてしまった。  これまで学習にかけた時間は何だったのか思わず問いたくなるほどのスピードだったが、そう思案する暇もない。読み終えた本を書棚に戻しもせずに別の本を手に取った。
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