男②⑧

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男②⑧

自転車で、荷台にのぼりを付け、そして手を振り、片手運転で、歩道走行をする男。 名前を連呼するだけで通り過ぎ、誰もいない場所に向かって、「お手を振ってのご声援ありがとうございます。」と、走り去る車。 あちらこちらと、賑わう時期がやってきた。 市議会選挙の活動が、始まったみたいだ。 女は、親という車椅子に乗る女を、期日前投票へ連れていく為に、外に出た。 車椅子を押して、歩いていると、ポスターの男らしき人物が、車椅子の女に握手してきた。 又歩くと、違うポスターの男らしき人物が、車椅子の女に握手してきた。 又々歩くと、又違うポスターの男らしき人物が、車椅子の女に握手してきた。 車椅子の人間に近付くのは、俺って親切そうに見えるだろう、と思っての作戦か!? それとも、車椅子目線まで腰を落とせば、俺って優しそうに見えるだろう、と思っての作戦か!? その後も、道中延々と、ポスターの人物らしき男は、寄ってきた。 普段は、男など全く寄ってこない親子なのに…。 なので女は、車椅子の女に、 「スマイル0円、与えとき。」と、告げた。
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