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男⑧
海外からのお客様も多い商店街。
メイン通りは、行く度に、○月○日オープンと書かれた工事中のお店がある。
その商店街には、その趣味の方々には、とても魅力的に見えるであろう、ドル箱を積んだ人達で、いつも満席状態の、ガラス張りのパチンコ屋さんも有る。
店の前を通るだけで、タバコの臭いが溢れている。
そのパチンコ屋さんを、少しだけ歩いて、曲がった所に有る路地裏には、一坪二坪程の小さなお店が、あちらこちらと…。
休日の昼間から、沢山の人達が飲んでいる。
歩きまくりで、お腹が空きまくりで、体が悲鳴をあげていたから、ちょっとだけの好奇心で、覗いてみた私。
どこもかしこも混んでいるのに、誰一人居てなさそうなお店を見付けてしまった。
そのお店は、ビニールの入り口に、小さく【営業中】と出ていた。
でも、中は薄暗くて、営業しているのかさえ分からない。
なので、私はビニールの壁を、手で持ち上げて聞いた。
「営業していますか?」
男は、「表に出てる。」と、言った。
その時に、やめれば良かったのだが…
空きっ腹と、やっと見つけた休憩場所。
一生懸命営業中と見えにくい場所に置かれた看板を見付け、入ってしまった。
誰もいない一坪の店内。
男は、私に酒を出すと、
料理を作りながら、自分の人生を語り出し、
どれ程の挫折感を味わい、今に至るかの全てを話し切った。
私を、誰だと思っているのだろうか?!
でも、こんな男に、もちろん注意する気力も無い。
なぜって?!
こんな男らの共通点は…
酒を飲みながら仕事をしている事を、知っているからだ。
なので、私は…
「言うとくで!酒ってもんわなぁ~、働いた金で飲むから、御褒美なんや!
あんさんの仕事のやり方が間違ってるから、人生まで失敗してるんや!
だから、この店!客けぇ~へんのやぁ~!」
と、声に出さずに、心の中で呟いた。
もちろん、言うわけないやん!
今の世の中怖いやん!
いちよ、私…。
お金払う立場のお客様なんだけれども…、
そんなん言うたら…、
絶対に怖い事起きる…位…
分かるやん…。
その店には、こうして、誰も来なくなるんやろうね。
でも、挫折感の人生話は、作られた話よりも、オモロイねん。
こうして、私は…
私やったら…この男を幸せにしてあげられるのではと思い、関係を持ってしまうのだよなぁ~。
アカンよね(笑)
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