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第1章(1) セツナと凪
【た・・けて・。
助けて・・・〇〇。】
記憶。
時に、自分の身に覚えのない出来事が、
まるで、本当に起きたかの様に、鮮明に頭を過ぎる。
あれは、夢で見たのか。将又(はたまた)、忘れてしまっているのか。
僕の不確かな記憶の淵に、映る記憶は、
綺麗な少女が、僕に助けを求める映像。
それ以上は、覚えていない。
けれど、その景色と声は、どの記憶よりも美しかった。
「また妄想でもしてるのか?セツナ。」
目を覚ますと、目の前に、凪(ナギ)が僕の顔を覗き込んでいた。
《倉本 凪-クラモト ナギ 26歳 性別:♂》
凪は、僕に色んな事を教えてくれる兄貴分的存在。
僕は、ゆっくり身体を起こし、此処から観える景色を眺めた。
「もうすぐ1年だな・・・。」
1年。それは、僕がこの夢を見始めたの同時に、世界が大きく変わった事。
セツナと凪の見つめる景色は、滅びた都市。
この2人が、育った故郷だ。
10年前。
世界は、変わった。
“記憶の断片”と呼ばれる前世の記憶が、多くの人々に甦り。
“記憶の断片”を鮮明に、思い出した数だけ、魔法が使える世界となった。
つまり前世の記憶を多く思い出した=魔力。
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