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「これ、柳くんのじゃん。帰る時に落としちゃったかな」
思わず「えっ!」と声を上げてしまった。今聞いたばかりの新入部員の話と繋がる。
「あ、あの……新入部員って、まさか?」
ヒラ先輩がこともなげに頷いた。
「そう。その定期の持ち主。一応明日から正式な部員ということになるかな。来週、彼の歓迎会も兼ねて召集掛けるね」
私は呆然とするあまり、返事するのすら忘れてしまった。
入部したのが柳くん? 彼が、この園芸部に?
――うっそ。意外過ぎ。
「あ。2-6って、あんちゃんと同じクラスじゃない?」
お岩先輩が手元の紙――恐らく、入部届を見ながら言った。
「じゃあ、ちょうどいいね。それも明日返しといてよ。学生課に届けるより早いだろ」
ポイッとパスケースを渡される。ヒラ先輩はニッコリと笑った。
「これで部員は10名。貴重な人材だから、逃げられないように仲良くしてやってくれよ? 活動日には引っ張ってでも連れて来るんだよ」
「えぇ、そう言われても……」
困る。話したことはおろか、まともに挨拶すら交わしたことないのに。
ため息をついて、パスケースに視線を落とした。
その時、ふと気づいた。
カタカナの名前の後の数字。
「……あれ?」
「どうした、杏ちゃん?」
「――い、いえ、別に!」
咄嗟に作り笑いを返す。隠すことではないかもしれないけど、なんとなく言いたくなかった。
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