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僕を失う事が何よりも一番悲しいと言ってくれた彼女。
僕は今の僕のまま生きる事よりも
これからも彼女の側で生きる事を選ぼうと思う。
新しい僕はきっと、この事を覚えて居ないだろうから、本当は駄目だと解っているけれど、このデータを残していくよ。
僕はとても幸せだ。
※※※
たまたま見つけた、アンドロイド専用のデータチップ。データを読み込み目を閉じて再生していた。
「ねぇ、何しているの?」
後ろから突然声をかけられ、僕は穏やかに振り返る。
「日向ぼっこですよ」
彼女は僕の顔を覗きこんだ。
「何か付いてるよ」
彼女が指で僕の頬からすくいとってくれたオイルは、日の光を反射して七色に煌めいた。
「綺麗ね」
そう微笑んで部屋の中に戻っていく彼女の腕の中には、彼女に良く似た可愛いらしい赤ん坊が抱かれている。
彼女が綺麗だとすくい取ってくれたオイルは、僕の瞳から流れた物だった。
まさか僕の死んだ理由を知る事になるなんて思って無かった。
僕も彼女が子供を産んだ時、とても美しい雫を見た。彼女の涙は、変わらず綺麗だと思う。
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