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一度、紋白蝶がどこに住まいを得ているのか不思議に思って、神様と探しに行ったことがあった。神様はなにも言わずに、落ちていた枝を撓らせながら勇んで進む私のせっかくの気分を害さないように努めるだけで、積極的に探索に協力したわけではなかった。それはいつものことだった。私がなにか行動を起こす度に、神様は否定せず、陽炎のようにゆらゆらと揺れては私の背後を守った。影と同化して私の数歩後を彷徨うように歩く神様の侘しい笑顔が視界を過る度に、紋白蝶のことばかり考えるように努め、見ないフリをした。 菜の花畑の、特に蜜が滴る花にもいなければ、奇をてらって立ち寄った切り立った断崖にも、人を寄せつけない洞窟の奥にも、それらは見つけられなかった。定型通りに失望する私を、神様はやはり常套句で慰め、こう言った。 「あちらの丘陵で今朝、死骸が出たみたいよ。住処がわからずとも、そこに行けば、見られるはずだわ」 私たちは丘陵を目指した。丘の頂上に近づくにつれ、懐かしい香りが鼻腔を擽った。濃厚に匂いたち、甘やかで、息が詰まるほどなのに、そこには透きとおった、清流から迸る水飛沫のような爽やかさが入り混じっていた。それが死人、生とは分け隔たれた処にいるものたちから香るものだということは、つまり死臭であることは、もう少し後になって知ることだった。 果たして、丘陵の草叢の陰で一匹の野兎が息絶えていた。それはすぐにわかった。陽が落ち、黒々とした草や花木を翻すように、純白がどこからともなく集い、翅を擦れ合わせる協和音がやさしく鼓膜を穿った。私が草叢の一端に手をかけて奥を探ったとき、神様は強く瞼を閉じてそれ以上進まなかった。私は急かさずに、神様をそこに放置し、草を分け入って覗き見た。 なんて美しく、残酷なものなのだろう、死というものは。
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