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死骸の回収機械はまだ到着していないため、そのまま放置されている。見慣れてしまえばそう恐怖を抱く景色でもない。朝、目覚めの折、目映い太陽から放たれる光線に照らされた死骸たちに沈黙と祈りを捧げ、その厳粛な空気は神様が指にかけた弓がはり詰めるに等しく清らかなものだ。今にもその嫋やかな指から放たれようとする弦は的ではなく生きとし生けるものの生を射抜くために在る。的となるのは私かもしれない。私でもいい。神様自身だったら少し寂しい。なんにせよ、隣にいる神様が真なる神性を持っていないことを私は知っている。全知全能の神からおこぼれを受け取って生き永らえているだけの仕組みだ。本当の神様は私のために泣いたりしない。本当の神様は私のために愛を紡いだりしない。本当の神様は、真なる神様は、いつだって無遠慮に美しく、惨く、人間に干渉しない。涙なんて知らない、愛なんて知らない、試練は与えない、ただそこに在るだけ。神様が欲しいものはなんだろう。割と叛逆かもしれない、と思って、笑うと、「なに笑っているの?」と私の神様は少し不安そうに瞳を翳らせて、手を繋ごうとする。ほら、本当はこんなことしないのよ、神様ってやつは。
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