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幻霊が壁を蹴って僅かに飛翔し、地に降り立った。
振動で吹き飛ばされる様な地響きが私達を襲った。
そして、操縦席から幻霊師が降りて来ると、間もなく光の粒子になって、幻霊は消えた。
「やぁ、大事なかったかな?」
軍隊の深い緑色の外套を纏った男性。いや、同い年くらいの男の子。
髪は白くて短く、つんつん尖っている。
彼の双眸は丸く、無垢そうな赤い瞳。……でもどこか儚なげだった。
まるで、迷子の子供の様な……。
その瞳を見た途端、匂いの様な親近感の様なものを感じた。
彼は私と同類だと、直感した。
「あ、あの。ありがとうございます」
幻霊師に私は頭を下げた。
私達はなんて幸運なんだろう。あの状況で助かるなんて。
この幻霊師様には感謝してもしきれないくらいだわ。
「いや、いいんだ。……それより、ここはどこなんだい?」
私は一瞬耳を疑った。幻霊師様はここがどこだか分かってない。どうやら道に迷われてらっしゃる様だ。
「ここはクローディーの北。第十区画の遺跡群だと思われます」
すると、幻霊師様は左手で頭をガシガシ掻いて溜息をつく。
「参ったな、案外クローディーに近いのか」
この辺りはクローディーや周辺諸国は草原か砂漠になっていて、遺跡群だけがまるで樹海のように広がっている。
遺跡群の規模だけで言えば、砂漠を軽く飲み込む程に広大で、管理しやすい様に区画分けがされている。第一区画から第二百区画まで。まだそれでも、探索が進まずに区画分けされていない地域もある。
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