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寧ろ、区画分けがされていない地域が殆どで、建造物の未知の樹海となっている。
「あの、幻霊師様。お名前をお伺いしてもよろしいですか?」
「僕はヴァンス。ヴァンス=フィーゲルダイン」
幻霊師様は狙撃銃を肩に担ぎながらそう名乗る。
その姿は、勇ましく逞しく私の目に映った。
†
ガラスの無い、枠だけの窓から部屋の中に夜の帳を引き裂く紅い光が差し込んできた。
僕達は古代遺跡の中で一夜を明かした。
正確には狙撃銃を握りしめて、寝ずの番をしていた僕以外と言うべきだが。
「おはようございます、フィーゲルダイン様」
ソフィーリア=デリアウスと名乗った白い外套に顔も身も隠したこの女の子は、壁に身を預けた姿勢からゆっくり立ち上がり、僕に折り目正しくお辞儀をした。
その背後にはくっつくように、同じ様な外套を纏った腰程の背丈の彼女の妹がいる。
「おはようございます……。僕の事はヴァンスでいいですよ?」
そう促すと、ソフィーリアは首を横に僅かに振った。
「いえ、貴方様をその様に馴れ馴れしく呼ぶのは……その、躊躇われます」
そう言って、憂鬱げに胸元に手を当てもう一度クビを少しだけ振る。
「私達の命の恩人……なのですから」
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