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円筒形の水筒の様な何かが、光を明滅させながら雨雲より濃い灰色の雲を吐き出して空を流れて行った。 気付けば喧騒は収まり、皆立ち止まって、指をさしてその水筒を見上げていた。 「なんだあれは」だの「見たことない」だの「幻霊か?」だの口々に言いながら流れるそれを目で追っていた。 そして、突然水筒の円筒形の外殻が4つに割れて宙へ投げ出される。 そこから鳥の様なものが飛び立った。まるで巣から飛び立つ羽虫の様に、五体、十体ととめどなくどんどん出てくる。 羽虫はこちら目掛けて降りてくる。 人々は静観することをやめ、悲鳴をあげて思い思いの方向へ走り出した。 僅かな者達はは近くの建物、橋の下、とにかくあの羽虫から逃れようと皆必死になった。 そしてその大半が港の戦艦の搭乗口を目指していた事が問題だった。 僕はギースへ押し寄せる人混みに押し出されて、母から手が離れた。 「ヴァンス!」 母が悲鳴じみた声で僕の名前を呼んだ。 母の元へ戻ろうとしたが、大人の群れにまだ12の子供がどうして抵抗できよう。僕はそのまま港の淵から海へ転落した。 なんとか水面に浮かび上がって港の近くの橋の下へ続く階段へたどり着いた。 父と母、それから妹は無事にエルに乗船出来ただろうか。
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