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対空砲火を始めながら滑り出す様に出航するエル。その甲板には零れ落ちそうなほどに沢山の人がひしめいていた。 それらの中でも最後の方に乗ったのだろう、母と妹と父は、僕を探して色んなところをキョロキョロしながらそこにいた。 良かった。みんな乗船できたんだ。 行先は違うけど、今から港に戻れば俺もギースに乗れるはずだ。 重たい振動が走り、土屑が落ちてくる。 見上げると、羽虫が橋の上に立っていた。 いや、近くで見ると羽虫とは程遠い。 1階建ての民家程もある背丈で、全身は白銀の鋼鉄で覆われ、鳥のような逆関節。両手に銃を持ち、翼を畳んで周囲を一瞥するその様は……噂通り巨人と言えた。 正確には幻霊の巨人像……いや、正確には巨人像の幻霊と言った方が正しい。あらゆる幻霊は人が召喚し、使役するもので、野良の巨人像や一部の動く遺物は自分で意志を持って動いているもの、これらは大別される。 そして大抵の野良の巨人像は、人に仇なす存在だ。 敵国の幻霊なのかもしれないが、救助船を攻撃してはならないという、戦争における決まりがある。 こんな所に来るはずはない。
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