見えない明星

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暗い……。ここはどこだろう。 目の前には真っ暗な闇、手にした松明も自分の周囲から闇を払うのが精一杯で、遠くまでは見通せない。 手にした紙に書かれた線の頭に万年筆を置いて、続きを書き、一歩踏み出す。 これは歩いたところに沿って書いてきた、簡易的な地図だ。 歩き始めるも、腰に巻き付けた短剣、鞄、狙撃用の長銃、そして幾ばくかの食料が僕の足取りを鈍らせた。 時間を確認する術がないので殆ど勘になるが、道に迷ってかれこれ半日は経っているかもしれない。 もしそうなら、僕が出発したのは夕方だから、外はもう夜明け頃だろうか。 先程少し仮眠をとったので、眠くはないが気分は最悪だった。 もう五年も経ったのに、まるで重油が染み付いた様に、頭から離れず忘れられず、こうして偶に夢に出る。 僕の家族の最期。呆気ない程一瞬だったあの瞬間。 その夢を見ると、無力感とやり場のない怒り、虚脱感が僕を苛む。 正直、このまま闇に溶けて無くなってしまいたいほどだ。 だが、この闇はイタズラに俺の視界を奪うだけで、僕自身までは消し去ってはくれないだろう。 暗い洞窟はどこまで行っても同じ景色だった。
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