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この世界の人々はかつて大きな文明の力を手にして、長く繁栄してきた。
しかし、『嵐の日』を機に文明の成長は止まった。
それまで当たり前だった便利なシステムは失われてしまった。
道路から車は消え、鉄道は停滞、船は港で朽ちて沈み、空を飛ぶのは鳥だけ。
輸送手段が途絶えれば生活品が運ばれなくなって、消費先から商品が消えた。
電気が止まって食べ物が蓄えられなくなり、夜は闇に包まれ、工場も動かなくなった。
鉄とコンクリートで出来た建造物が遺跡となる世界。
未来らしかぬ未来を迎えた人々は現存する文明の利器を使って懸命に生きている。
この国の人達も再び来る希望を夢見て生きている。
しかし、希望を奪うならず者はこの時代にもいる。
警察も自衛隊も無い世界。生きるのは簡単でない。
混沌の世界に一人の男が確かな希望の光を指してくれた。
旅の必需に、日よけと雨よけに革のハットを被り、防寒にマント、護身の銃、移動に馬を使った。それはまさしく現代に蘇ったカウボーイだった。
村から村へ旅をし、行く先で仕事を受け、時にはならず者と戦う。
いつしか『渡り鳥』と呼ばれ、伝説になった。
彼に憧れた人達はその姿を真似て旅に出た。
馬に跨って、情報や荷物を届け、人を助け、外の世界にある遺跡に触れて外の世界にしか無い美しさを目に焼き付ける。
彼らは何者にも屈することなく、地を駆け抜ける。
明日を信じて。
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