出会い

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 ポニーテールを帽子で隠しているカウガールは緑豊かな斜面にブロックを積み重ねた下り坂の道を愛馬と共に進んでいた。  もう少しで平地に差し掛かる時、静寂を破る炸裂音が耳に入った。銃声だ。二度、三度と響く音の間隔から銃撃戦とわかる。  銃声のする方を見ると、二頭の馬が牽く馬車が廃屋の点在する直線道路を猛スピードで走っている。馬車と言っても、中世や西部劇で見るような姿形ではない。かつての車を台だけにして板の囲いを付けた『馬車』だ。面影があるのはかつての運転席にあったブレーキペダルとタイヤくらいだ。  その馬車の後ろから数頭の馬の集団が追う。盗賊だ。汚れた身なりの彼らは奇怪な笑い声を上げながら景気づけに銃を空に向けて撃って『狩り』を愉しんでいる。  コルト・三十二口径自動拳銃、警察銃のニューナンブ、旧ソ連製のトカレフ、単発散弾銃を持っているがテープの補修や錆がひどい。  馬車の御者席で追い鞭を振っているのは女性。母親らしく、傍らには怯える子供。シートに包まれた大きな荷物が載せられた荷台では二人の男がボルトアクション・ライフルと弓矢で懸命に応戦している。  盗賊は狙いを定めずに面白半分で撃つが、ついに馬車の一つのタイヤに命中してしまい、みるみるスピードが落ちる。 (助けなければ!)  少女ガンマンは「たぁっ!」と手綱を打って愛馬を走らせた。  しかし、間に合うか?  馬車と盗賊の距離は縮まる。すると、盗賊の後ろから茶黒い馬が現われた。力強くも軽快に道路を蹴る馬は騎手のマントが水平にはためいて、下の水色のジャケットが見える速度で走る。
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