出会い

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 御者台では母親が鞭で警察銃の盗賊に抵抗していたが、腕を掴まれてしまった。それを見た子供は助けようと飛びかかったが、突き飛ばされて逆さに落ちてしまった。幸い、衣服が車体の金具に引っかかったので地面に叩きつけられなかったが、回転する車輪はすぐ横だ。  荷台の盗賊はついにライフルを奪うと目の下の相手に銃口を向けたが、引き金が引かれる直前に少女ガンマンがモーゼル大型拳銃を撃って助けた。  少年ガンマンも駆けつけた。少年は手綱を握って姿勢を斜め下にすると、逆さになっている子供の手を掴んで持ち上げて自分の後ろに乗せた。  警察銃の盗賊は銃把で母親の頭を殴りつけて気絶させたが、目の前の近さまで来ていた少年ガンマンに気付くと動転した表情で銃を向けた。しかし、一瞬早く少年が撃った。盗賊の弾は少年の頬をかすめたが、少年の弾は相手の胸に命中した。御者台から落ちた盗賊はタイヤに巻き込まれたのか、馬車が軽くバウンドした。  盗賊は全員倒した。が、母親は起きない。悪い事に馬車は崩落した橋へ進んでる。母親を失う恐怖に子供は震え、荷台の人達は暴走に怯えて囲い板にしがみついているので動けない。  少年は隣にいる少女に子供を託した。子供は少女の手を借りて白い馬に乗り移ると、少年は愛馬の鞍の上に腰を低くして立つと、タイミングを見計らって馬車の御者席に飛び乗った。  倒れている母親をうまくどけ、手綱を引くと同時にブレーキペダルを踏んだ。壊れた橋の寸前で馬は甲高い声とともに前足を上げて止まったが、馬車に大きな制動がかかり、荷台の積荷が滑ってバランスが崩れたので横倒しになった。人は転がり落ち、シートに包まれた荷物も重い金属音を立てて落ちた。  舞い上がった土煙が晴れると、荷台に乗っていた人は無事に体を起こした。母親も少年がかばってくれたので傷一つない。 「しっかりしてください!」  自分の頬の怪我を気にもせず少年が呼びかける。母親が目を開けると少女も追いついた。子供が馬から降りると二人は涙を流して抱き合った。 「ありがとうございます。本当に・・・、ありがとうございます」  母親は二人のガンマンに何度もお礼を言ってくれた。 「いえ、当然の事をしただけです」  少年は微笑みながら、ようやく頬の血を拭った。
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