少年少女ガンマン

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 あの日から、どのくらいの年月が経っただろう。今日も青い空に白い雲が浮かび、太陽が輝いている。  下には草が一面に茂る台地。そこに一本の細いアスファルトの道が敷かれている。草原の中には野菜の画かれた看板や朽ちたビニールハウスが見える。かつては畑だったが、もう長いこと人の手が入らなくなって面影は無い。  その人気の無い道を茶黒い馬に跨った一人のカウボーイが進んでいる。自分の頭に合ったこげ茶色のハットを深く被り、肩からは全身を包めそうなマントが風に揺れ、馬の背には寝具や調理器具といった野営具が載せられている。 『ブルル・・・・・・・』  鼻を鳴らした愛馬が静かに足を止めたので、カウボーイは頭上を見上げた。ようやく顔が見えた。真にボーイにふさわしい少年の顔だ。年齢は十代後半だろうか。  ようやく出てきた精悍さとあどけなさが混じる顔の少年は、馬を降ると強ばった足腰を屈伸してほぐしてからもう一度上を見る。  視線の先には蔦に覆われた信号機と二方を指す白矢印が記された青い道路標識。行く先の名前は風化で読めなくなっている。  少年はマントを軽くめくった。ようやく彼の服装が分かった。  水色のジャケットを着て、手にはよれよれの軍手、靴底に拍車を固定したスニーカー。腰のベルトには拳銃ホルスターと予備弾を入れた巾着袋を提げている。  少年はジャケットのポケットから五円玉を出すと、指で上に弾いた。音を立ててアスファルトに落ちたそれの裏表を確かめると硬貨を拾い、再び馬に跨った。
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