少年少女ガンマン

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 場所は変わり、山を抜けるトンネルから白い馬に跨るカウボーイが出てきた。脚にはロングブーツ。マントを羽織った肩から伸びる革手袋をした手には松明代わりのカセットボンベ式のガスバーナー。火力を抑えたオレンジ色の炎が静かに揺れてる。  ガス弁を閉じて火を消すと馬の背に結わえたスポーツバッグにしまう。体をひねった時、赤い服の上に巻いたベルトの右腰に年期の入った厚い木の板がマントの裾から僅かに見えた。  カウボーイは手綱を軽く打つと、荒れ放題に伸びる緑の草の中の赤錆びた線路を目印に愛馬を進めた。  線路沿いにしばらく行くとダムが見えてきた。が、崩落している。  今の時代には珍しくない。人が離れた事でメンテナンスを失えばいずれかはこうなってしまう。それでも、川にとっては遮る物が無くなったので瓦礫の間を清流が流れている。  川の先には町が。道を埋め尽くすように草が生えている。これはダムの決壊で運ばれた土砂が町に流れ込んだ為。泥で埋まった家の駐車場車がない様子を見ると、住人が町を放棄した後に惨事に見舞われたようだ。  人命が失われていないのは幸運だが、家がこの状態では寝泊まりできないだろう。  ふと、丘の上に芸術的に鉄骨を組んだ何かの施設が見える。遊園地だ。大きな観覧車は今も立派に立っている。  ちょっと好奇心に駆られたカウボーイは遊園地に向けて愛馬を進めた。  
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