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主人公、葉月陸人は周りに無関心な高校二年生。
何をやっても満たされない心のまま、高校生になった今はただ時間を消費するように暮らしていた。
そんな彼は、夏休みの終わり、親に言われ部屋の大掃除をしていた。
何年も前の日記や、壊れたボールペンなどがでてくる中で、自身が常にみにつけていたモノを捨て、掃除にひと段落がつく。
やっと片付けを終えて疲れ切った陸人は、真夏の部屋に扇風機をつけて横たわっているうちに昼寝をしてしまう。
目を覚ますと、外はすっかり夕暮れに染まっていた。体を起こした陸人は、額を流れる汗を袖で拭うとコンビニのアイスを買いに外に出かける。
コンビニに向かう途中、車や人の気配が全くなく、セミの声すらしない異様な街を不思議に思いながらコンビニに駆け込む。
入ると流れるいつもの音楽に安心して、レジを見ると誰も人がいない。
動揺しながら店員を呼ぶも返事が返ってくることはなく、外へ出て町中を駆け巡る。
交番にも、学校にも、そして家にさえ1人も人間がいないことに焦り、道路で途方にくれていた陸人の後ろに突然現れる黒い渦。
あらわれた渦に吸い込まれた彼の頭に、幼い頃聞いたわらべ歌が流れる。
いきはよいよい 帰りはこわい
こわいながらも
通りゃんせ通りゃんせ
漠然とした恐怖で脳の片隅に焼きついたその歌を、祖母はかみかくしの歌だと言っていた。
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