人気のない好物件

リノベーション済マンション

　そのマンションに入居したのは部屋の広さと家賃が魅力だったからだ。

「リノベーションしたばっかりですからね、住み心地は新築と変わりありませんよ」

　案内してくれた不動産屋が言うには、一旦すべて空室にして大規模な改修をおこなったので、水回りや騒音問題に悩まされる心配もないとか。管理人室には常駐の管理人が住みこんでいて、セキュリティもしっかりしているらしい。

「まだ五部屋しか埋まってませんが、これだけの条件ならまもなく満室になるでしょう」

　新規に入居者を募集してからまもなく半年というのに、入居がたった五世帯というのは少し不思議な気もした。

　立地は申し分なく、これだけの好条件なのに、リノベーションする前の住人は戻って来ないのだろうか。

　白い外壁がいくらかくすんでいるようにも見えたが、天気か何かのかげんだろう。

　引越した日、俺は階下の住人にあいさつに行った。

「上に入居した長谷川といいます。よろしくお願いします」

　ドアを開けたのは初老の男性だった。

「うちは病気の家内がいて寝たきりなので、なるべくならお静かに頼みますよ」