◆略取、つまり誘拐(一日目)

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 金が欲しかった。しかも、早急に。そのためには何をしなければいけないのか、焦る頭で必死に考える。  脳裏には、地獄のように冷酷な言葉がしみついていた。 「次までには決断をお願いします」  決断。そんなもの、俺の中ではとっくに下されている。ただ、その決断を実行するためには金が必要なのだ。  貯金はない。土地・屋敷、株などの財産もなければ、頼れる縁者もいない。笑ってしまうぐらい何も持っていない自分が、今すぐに大金を手に入れる方法。どんなに考えても、まっとうではない方法しか思いつかなかった。  まず第一に、泥棒・空き巣。  自慢ではないが影の薄い人生を歩んできたから、誰にも気づかれないことにかけては自信がある。しかし一般的に考えて、家のタンスや戸棚の中に、大金をしまいこんでおくものだろうか。今の俺に必要なのは当座の金ではなく、まとまった額の大金なのだ。  第二に、銀行強盗。  うまくいけば、大金が手に入るだろう。が、これはあまりにリスクが大きすぎるように思う。あがり性の自分が、銀行のカウンターでスムーズに「金を出せ」と言えるだろうか。噛みそうな気がした。  そして第三に、身代金誘拐。     
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