第1章

3/10
106人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「だ、だって、へんになるか、ら」  奥まで入れて、指を折る。俺の記憶では草野の特に好きな場所で、その記憶は間違いではなかった。 「ひゃ、ぁ、や、そこだめ、よ、し」  指を動かし続ける。声の先がどんどん細く高くなる。腿がぶるぶる震え出したところで、胸の突起を甘噛みする。だめ、と悲鳴のような声が上がって、俺は意地悪く聞いてみた。 「だめ?やめる?」  酔っ払いの時とはまた違った感じに頬を染め、目を潤ませた草野はもう、言葉で答えることができない。はっ、はっはっ。短い息をつきながら、はちきれそうに硬くなっている俺の部分に手を伸ばした。 「こっちがいいの?」  ぶんぶんと、頭を縦に振る。  10年以上していないのに、いきなり突っ込んで大丈夫なんだろうか。そう考えたあと、俺はすぐに自分の思い上がりに赤面した。  10年以上していないのは、俺であって。  草野はどうなのか。 「こっち、して」  俺の戸惑いを察知したように、草野が促してくる。ふんわり開いた唇の間から、舌先が覗いた。そこがちろ、と動いた瞬間、腰にずくんと疼きが走った。  俺は草野の舌先を飲み込んでしまうほどに強く吸い、吸いながら支度をして、中に入った。 「は……ぁ、あぁ、」 「……く、っふ……」  奥の奥の奥まで、ゆっくり、進む。ごつ、と当たるところまで。 「……ぅ、ん」   やばい。  と け る。 「っ……、」  ぶる、と一回大きく肩を震わせて、草野が俺にしがみつく。  二人とも何も言えず、どうにも動けず、抱き合ってしばらく、そのままでいる。  草野と「パラダイス」に行くようになったのは、高3のはじめの頃だった。   草野の幼馴染の沙織という同級生が他校の女子と付き合っていて、女だけではラブホに行くことができないからと、草野に相談を持ちかけた。こんな田舎のラブホでは、同性同士のカップルは問答無用でお断りだったのだ。草野は友達以上親友未満の俺にそれを相談してきて、その時童貞でラブホ未体験だった俺は、好奇心から助けを申し出た。草野と沙織、その彼女と俺がカップルを装って、入場したら相手を変える。休憩二時間の間、草野と俺はそこで受験勉強してればいいーー女子たちはこの提案に大感謝して、二部屋分の代金は沙織の彼女(弁護士の娘か何か、いいとこのお嬢さんだった)が払うことになった。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!