第一話

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「ダンクはわかるよ!それじゃなくて、ダァンって!朔先輩を避ける時に使ったダァンッて!」 ダァンッという擬音語をよく使う。 でも、何が言いたいのかはわかった。 「別に、名前は無いよ。俺のテクニックなだけで」 ああ、もう頭を抱え込みたい。俺が落ち込んでいる事なんて知りもしない彼女は、スゴいととても褒めてきた。 「…無愛想は辛いな…」 「…」 肩越しにぼそり、と朔先輩に言われた一言は、俺の胸にぐさりと刺さってしまった。告白してないのに、フラれた気分になる…。 「朝比奈くん、やっぱり上手いね」 俯く俺に影がかかったと顔を上げると、そこには優しく微笑む瑞希先輩が居た。松葉杖を持っているだけで、さっき見た数十倍も痛々しい。 「あざす」 俺は返事をして、ペコリと頭を軽く下げた。 (早く出ないと出にくくなるな…) そう感じた七世は、そのまま足早に体育館を去ろうとする。その直後、瑞希の呼び止める声が背後から聞こえた。 「朝比奈くん。バスケ、しようよ」 鼻の先にツンとした何かが残る。本当は、したい。 俺は…バスケが…――。 ≪もう、お前の顔なんて見たくない≫ ドキリ。 心臓が跳ね上がった。雑音(ノイズ)が耳に響き渡り、俺の希望と夢を同時に破壊する。夢が…ガラスのように弾き割れた。 七世は、はあ、と大きなため息をついた。 ゆっくりと振り返ると、三人がじっとこちらを見つめている。朔は試すように、瑞希は願うように、沙樹は、信じるように…。 そんな姿を見ても決心がすぐに揺らぐ。 (…俺はもう、バスケを辞めたんだ) する必要のないものは除外する。 そうして、俺はいつも自分にカーテンを作り、自己満足で逃げるのだ。
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