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「ダンクはわかるよ!それじゃなくて、ダァンって!朔先輩を避ける時に使ったダァンッて!」
ダァンッという擬音語をよく使う。
でも、何が言いたいのかはわかった。
「別に、名前は無いよ。俺のテクニックなだけで」
ああ、もう頭を抱え込みたい。俺が落ち込んでいる事なんて知りもしない彼女は、スゴいととても褒めてきた。
「…無愛想は辛いな…」
「…」
肩越しにぼそり、と朔先輩に言われた一言は、俺の胸にぐさりと刺さってしまった。告白してないのに、フラれた気分になる…。
「朝比奈くん、やっぱり上手いね」
俯く俺に影がかかったと顔を上げると、そこには優しく微笑む瑞希先輩が居た。松葉杖を持っているだけで、さっき見た数十倍も痛々しい。
「あざす」
俺は返事をして、ペコリと頭を軽く下げた。
(早く出ないと出にくくなるな…)
そう感じた七世は、そのまま足早に体育館を去ろうとする。その直後、瑞希の呼び止める声が背後から聞こえた。
「朝比奈くん。バスケ、しようよ」
鼻の先にツンとした何かが残る。本当は、したい。
俺は…バスケが…――。
≪もう、お前の顔なんて見たくない≫
ドキリ。
心臓が跳ね上がった。雑音が耳に響き渡り、俺の希望と夢を同時に破壊する。夢が…ガラスのように弾き割れた。
七世は、はあ、と大きなため息をついた。
ゆっくりと振り返ると、三人がじっとこちらを見つめている。朔は試すように、瑞希は願うように、沙樹は、信じるように…。
そんな姿を見ても決心がすぐに揺らぐ。
(…俺はもう、バスケを辞めたんだ)
する必要のないものは除外する。
そうして、俺はいつも自分にカーテンを作り、自己満足で逃げるのだ。
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