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「瑞希センパイ。俺、今日は楽しかったっすよ」
「…そう?」
先輩の顔色が少し良くなった。俯いていた首が上を向く。
「でも、俺はバスケは嫌いだ。もう、二度としない」
ペコリ、今度は深々と頭を下げて隅に寄せていた荷物を全て持つ。そして、真っ黒のカーテンを捲り、三人の視界から消え去った。
「…残念、だな」
残された三人の内、最初に声を出したのは瑞希だ。また俯いて、静かに笑う。その目線の先には、包帯でぐるぐる巻きにされた膝があった。
「七世がそこまでバスケをしたくない理由って…」
七世が出て行った跡――静かにカーテンが揺れている。そんな光景をじっと見つめながら沙樹は呟いた。
「ま、それぞれ理由があるんだろう。…俺はアイツ絶対来ると思うけどな」
「え?」
沙樹は朔の言葉が気になって問い返す。瑞希も疑問に感じたらしく、目をまんまると見開いて、朔の言葉の続きを待っている。
だが、朔は「何でもないよ」と軽くあしらってボールを拾うべく、と何かをひょいひょいと天井に向かって投げながら体育館奥へと戻っていった。
「どういう意味でしょう…?」
「さあ…」
そんな朔の背中を見て、首を傾げるのは沙樹と瑞希だ。
二人は気づいていなかった。朔の投げていた物に、七つの星が描かれている事に…。
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