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あれから、俺は真っ直ぐに更衣室へと向かい、ジャージへと着替えを完了させた。汗だくの制服をバッグに無理矢理詰め込み、またもや昇降口へと向かう。
もう日はほとんど落ちていて、地面に映る自分の影も薄くなっていた。カラスの鳴き声も、もう聞こえない。
俺はスリッパを片付けて靴に履き替えた。
出口へと向かい、段差を降りる。
(…俺はバスケを辞めたんだ)
ズボンのポケットに突っ込んでいた右手を抜いて、正面に伸ばす。骨張った指先がまだあのボールの感触を覚えていた。
本当はもっと走りたい。戦いたい。バスケを…したい。
(先輩と…楽しかったな)
今までが嘘みたいに感じてきた。熱気も、注目も、全部。
バスケをする権利を得るまで、どれだけ時間を費やせばいいのだろう。
いつの間にか、バスケをしたいという新しい感情が芽生えていた。
だが、我に返ると頬を叩き首を水浴びした犬のようにブルブルと左右に振る始末。
(可能性は0%。今更、したいだなんて欲が顔を見せるな)
一年間我慢できたのだ。これからもずっとしようと思ったら出来る。今日が最初で最後の日。バスケというスポーツとのお別れ会という事にしようじゃないか。
七世は数学の宿題をメモする事を忘れていたので、忘れぬ内にしようと近くの椅子に腰掛けた。
(そう。こうやって少しずつ忘れて行けばいい…)
何気ない積み重ねが、後から良い物に変わる。七世はそれを信じて、メモ帳を取り出した。同時に筆箱も出そうとバッグの中身を探る。
…だが。
「ないぃぃぃぃっ」
俺はバッグの中身を全部出して探した。けれど、見つからなかったのだ。
今日は本当に最悪な日だ。
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