第一話

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高校生になったら、アルバイトをしよう。 高校生になったら、新しい自分を見つけよう。 高校生になったら…新しい出会いを求めよう。 中学三年生の時の受験シーズンの飲み込まれそうになった時、俺はこういう風に新しい自分を求め、勉強を頑張った。 その努力が認められたのか、俺は運よく第一志望の学校に受かることができたのだ。 第一志望の、この尾張(おわり)高等学校は、勉強より体育。…というような、運動を中心にそこそこ有名な学校だ。 けれど、元々俺が住んでいた地域からは大分離れている。友達がいない事でも、俺には好都合だったので、親に頼み込んで寮に入れてもらったのだ。 俺の場合、苦労して入った学校だけれど、部活に入ることは無いだろう。 それは中学の時から決めていた。 特に、バスケットボールだけは…。 絶対に入ろうとは思わない。 ただ、勉強より運動の方が好きだから。 そんな単純な理由で入った、とならば、この高校に部活目的で入った奴に失礼だろうか。 けれど、俺がこんな理由で入ったなんて事は誰も知らない。 そんなこんなで、一年生という最初の難関を乗り越えただけ、褒めてほしい。 朝っぱらからグラウンドで、部活を行っている人たちを横目に、俺は教室へと向かった。 薄いピンク色の綺麗な桜の木は、時として生え変わり、今は青々しい緑の葉が生えている。 そよそよと優しい風が吹いたかと思うと、教室に入り、少ない人数の中で一人座り込む俺の頬を撫でた。
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