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その人は首の所と後、右の腕に星、左の腕に月のタトゥーをしていた。
白のクルーネックの半袖シャツはそれらを隠すことを全く成していなかった。
ジーンズに雪駄履きのその人はラフな服装からは程遠く丁寧な所作で私が用意したお茶に手を付けた。
縁側に腰を降ろして。
「素敵な眺めだ。」
お茶を一口飲むとその人が言った。
はぁ?
この墨を流したような夜が?
そもそも私、なんでこの人、お茶に誘ったのだろうか?
「そう思わないか?」
「えっ?」
「そうは思わないか?」
「えっと…眺め?」
の事を言ってるのよね?
「眺めだとしたら?」
なに?
なんなの?
人を試そうとしている?
面倒な人に声掛けちゃったかしら。
「だとしたらーーー」
「だとしたら?」
「つまらないわ。こんな何もない夜。」
月も星も見えない夜なんて、
つまんないじゃない。
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