15人が本棚に入れています
本棚に追加
神武貴士
貴士が流れ星にとっさに願ったことはとりあえず叶っていた。
正確には白い星が流れる瞬間に、貴士は菫の手を握っていたのだが。
菫と一緒に帰るようになって、いや、たぶんそれ以前から、貴士は菫の白くて細い指に触れたいと思っていた。
隣の席という近さ以上に、貴士はこんなに女子とたくさん話したことはなかった。中学の時、同じ陸上部の子に告白されて、付き合ったことはあるが、今思えば貴士は自分からは何もしてなかった。話もほとんどその子がしていて、貴士はうなづくだけ。もちろん貴士自身は聞いているだけで楽しかったのだが、彼女の望むことが出来てなかったのか、夏休みが明けたら振られてしまった。彼女は他の男子と付き合っていた。
だから今回、菫に『一緒に帰りたい』と言われ、しかもこちらが終わるまで待ってもらえたりして、貴士はかなり舞い上がったのだが、日が経つにつれ、だんだん不安になってきた。
中学の時とは違い、「好きなので付きあって下さい」と言われたわけではない。お笑い番組を見た翌日にお互い面白かった場面を話すことの延長で、ただ話したいから一緒に帰りたいのかなとも思った。
最初のコメントを投稿しよう!