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比嘉菫
「比嘉!」
菫は貴士が初めて手を握ってきたことに息が止まりそうなほど驚いたが、彼が指した空を見て反射的に心の中で願い事を言っていた。
七月のまだ明るい薄紫の夜空にひとすじの光がすっと流れた。よく聞くように本当に一瞬の出来事だった。菫は流れ星を見たのが初めてなのもあるが、貴士と手をつないで一緒に見れたことがとても嬉しかった。
神武貴士とは同じ2年C組のクラスメートというだけで、共通点は特にない。くじ引きで決まった席で隣同士になり、なんとなく話をするようになった。
二週間前、菫から告白した。
『一緒に帰りたいから、部活終わるの待ってていい?』
思えば告白とは言えないものかもしれないが、菫にはこれで精一杯だった。
『うん……いいよ。俺、七時過ぎる時もあるけど……』
陸上部は競技によっては準備や片付けがあるのも知っている。貴士はハイジャンプをやっているのでなおさらだ。基本自分たちが使うものは自分たちで片づける。
一方の菫は吹奏楽部でクラリネット担当だった。十人もいる。中学からやっていて、大好きだが、フルートほど目立たない。
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