4.アヤとキヨシ

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「なぁ、俺へんなにおいする?」 「いや? いつだって爽やかな風が吹いてますよ、憎たらしいくらいに」 改めて嗅いでみるが別にへんなにおいはしない。むしろ無臭だ。きちんとクリーニングしてるし家族や他人にくさいと指摘されたこともない。 「着てたシャツが欲しいって……何だと思う?」 「あぁー。好きな男のにおいが好きな女の子って多いっすよねー。着るのかくんくんするのか、はたまた? どうやって楽しむかは本人のみぞ知るですけどぉー?」 薪菱は肩をすくめ目を三角にして『ウフフっ』っと笑う。 「女子はぁ、強い子孫を残すためにぃ、自分と遠い遺伝子型を持ってる男のにおいに強く惹かれるみたいですよぉ。それはもう理屈じゃなくて本能レベルで」 「HLA遺伝子? それくらい知ってるけどさぁ」 思春期の女の子がお父さんのにおいが大嫌いになるのは、近親相姦や間違いを起こさないように本能的に近い遺伝子を嫌うからだ。そして外でより遠い遺伝子を求めるようになる。 つまり。 サヤは理屈じゃなく遺伝子レベルで俺を求めてるって思っていいのだろうか……? 俺だってサヤの匂いが大好きだ。匂いをかぐだけでオカシクなる。 俺たち、唇やカラダだけじゃなく遺伝子レベルでもばっちりな相性? 考えたら頭が沸騰しそうになった。 「ちょ、ごめんもう戻るわ……」 鼻血が出そうだ。トイレに行かなきゃ……。
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