4.アヤとキヨシ

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逆襲を怖がってるサヤに声をかける。 「なんかあったらすぐに言って」 「……うん」 腰に腕を回し歩き始める。サヤは嬉しそうに微笑んだ。くすぶっていた炎がまた勢いをつけはじめ、抱く腕の力が自然に強くなる。 体同士がぴったりくっついて歩きにくくなる。 「さーちゃん一番人気だったね」 「え? そう?」 「トイレで男どもがエロいこと話してた」 男どもの妄想を思い出してムカムカする。サヤはきっと奴らの脳内で一回は抱かれてしまっただろう。都合のいいように……。そう思うと……。 「どんな?」 「言えるわけないだろそんなのっ。たとえ妄想でもサヤが他の男にどうこうされるの嫌だよ」 腰に回していた腕を解き、細い手首を掴むと駅とは反対方向に向かった。 「どこ行くの? 帰らないの?」 質問には答えずずんずん突き進んで、たどり着いた先はシティホテル。 部屋からスカイツリーが見える、シティホテルの中でもラグジュアリーなホテルだ。 「飲むの?」 「泊まろ」 「ええっ!?」 電車に乗れば家に帰れるのに、明日も仕事なのに、宿泊? サヤの顔に疑問が浮かぶ。 「朝早く起きて帰ろ」 短く言って会話を打ち切る。空いてる中で一番良い部屋を取ってカードキーを受け取る。エレベータの中で不安げに俺の表情を伺っている。 「ごめんね、断ってすぐ帰ってこればよかったよね……」 シュンとしてしまっている。サヤは自分を責めている。これはいけない。 「そんなんじゃないよ。怒ってるとかじゃないよ、全然。ただ……」 心臓をかきむしりたくなる。 「情けないくらいに、独占欲を抑えられないんだよ」 部屋に入ると、わざと開けてあるカーテンからイルミネーションされたスカイツリーの正面が見えた。宝石をちりばめたみたいな夜景も見えた。 そんなものはどうだっていい。サヤに見せてあげる余裕もない。
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