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「出来なくもないけど。アタシに頼みゴトするって、どういう意味かわかってるの?」
やはりそうくるか……。まつげがバサバサの目で誘われる。胸やけをおこしそうになった。
「ほらぁ、ちゃんと穴も作ったんだからぁ」
盛りの猫のように擦り寄ってくる。
「リョウちゃん着ヤセするよね。イイ筋肉。お友達にしとくのもったいなぁい。是非抱かれたぁい」
二の腕を撫でられてぞわぞわする。向こうでは泥酔したサラリーマンと女の子がディープキスしている。なんでもありなのだ、ここでは。今すぐ抱いてなんて言われかねない。
世の中、何事も駆け引きだとするなら。
中山の弱味を握っている分、乱暴に言うことを聞かせる方法もある。がそれでは真中と同じになってしまう。大事な友人なのであくまで正攻法でいくことにした。咳払いをして居住まいをただす。
「大切な人が苦しんでる。動画合成してリベンジポルノなんて許されるわけないだろ? 1人の女性を救うと思って手伝ってほしいんだ。今すぐに手を打たないと何してくるか分からないんだよ!」
いかつい肩を掴んで真剣に、必死に説得する。
「お前だって女なんだから、女の子の気持ちわかるだろ!?」
『女としての自尊心』をくすぐると態度が軟化した。
「それ、リョウちゃんの彼女なの? ずっと硬派で売ってたのにぃ」
「この問題が片付いたらプロポーズするんだよ」
「えーっ。それ死亡フラグみたいだからやめなさいっ!」
「別にフラグじゃないよ。ほんとは今すぐしたいけど、クズ野郎のせいでそれどころじゃないんだから!」
「ふーん。で、どんな女?」
「しっくりくる子だよ。可愛いし美人だし性格もいいし真面目だし」
「はぁ〜ウザっ!」
「ウザいゆーなっ!」
それから約3時間『デレデレして気持ち悪いわねぇ』などとなじられ、バカ高なシャンパンを次々とおろされ、どんちゃん騒ぎに付き合わされた。
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